採用基準は、求人票を作った瞬間に確定されるものではありません。選考を重ねるたびに、人事や面接官の頭の中で更新され続けています。問題は、その更新内容の多くが、人事や面接官の頭の中に残ったまま、暗黙知になっていて人材紹介エージェントへの共有や次の選考に十分反映されていないことです。
こんにちは! bgrass事業責任者のゆあさです。
商談で採用担当者とお話ししていると、エージェントへのフィードバックの話によくなります。「経験年数だけじゃなくて、もう少し自走できる人がいいです」「この経歴なら通して大丈夫です」「前回送っていただいた〇〇さんに近い方がほしいです」。採用をしていると、こうしたフィードバックをエージェントへ何度も伝えることになります。ただ、このフィードバックの元になっている判断の一部は、すでに候補者情報や選考結果、評価コメントの中に蓄積されています。
採用基準は、選考のたびに更新されている
採用基準は、最初に求人票を作った瞬間に完成するものではありません。実際の候補者を見て、「この経験なら代替できる」「この会社出身なら年数が短くても通せる」「逆に、この経験だけでは難しい」と、選考を重ねるたびに更新されていきます。問題は、この更新された基準の多くが、人事や現場面接官の頭の中にしか残っていないことです。
商談の中でよく話しているのが、求人票に書かれた要件と、実際に通過している候補者の間には「書いていないけれど、この人なら通せる」という暗黙知がある、ということです。この暗黙知が言語化されていないことで、本来であれば通過可能性のある候補者を見送ってしまう、という人材ロスにもつながります。
推薦の多くが見送りになる背景に、認識のズレがある
先日の商談で、あるIT企業の採用担当者様から伺った話です。月間の応募は200件前後、そのうち6〜7割が特定のエージェント1社からの推薦とのことでした。ただ、実際に日程調整や面談まで進むのは40〜60名程度、有効応募率にすると25%前後という感覚だそうです。
推薦の多くが見送りになる背景には、母集団の質や求人の難易度に加えて、エージェント側との「求める人物像」の認識ズレが含まれているケースがあります。求人票の文字情報だけでは、この認識ズレを埋めるのが難しいというのが実情です。
通過者と見送り者の差分を見ると、「実際の採用基準」が見えてくる
通過者・見送り者・評価コメントを継続的に見ていけば、「実際にはどんな人を通しているのか」はデータとして浮かび上がります。商談のデモでは、「今月の通過率の傾向を出して」とチャットで聞くだけで、通過・見送りの傾向がその場で返ってくる場面をご覧いただいています。定型レポートを事前に作り込むのではなく、聞きたい時に聞けば必要な分析が出てくる形です。
私たちが次に検証しているのは、選考結果を分析して終わるのではなく、その結果を次の母集団形成に反映し続けることです。
その第一弾として検証しているのが、エージェントとのコミュニケーションです。
通過した候補者や見送った候補者をAIが見れば、「次にどんな人を送ってほしいのか」「エージェントへ何を伝えるべきか」は、ある程度見えてきます。これまで人事が感覚的にやっていたこのフィードバックを、選考結果からAIが自動でつくり、エージェントへ返していく。まずはここから、母集団形成のPDCAを自律化できないかと考えています。
採用AIエージェントは、分析だけで終わらない
重要なのは、「AIに分析してもらう」ことではありません。分析結果を見た人事が次のアクションを考えるのではなく、分析から要件更新、エージェントへの共有までが一つのループとして回ることです。
社内の検証ミーティングで話していたのは、次の4ステップを一連の流れとしてAIに任せる構想です。
- 通過者・見送り者・評価コメントを分析する
- 実際に通過している人の共通点や判断基準を抽出する
- 「次にどんな人を推薦してほしいか」を言語化する
- エージェントへ共有し、その後の推薦結果をまた学習する これまでは、人事が通過傾向をなんとなく覚えておき、思い出したタイミングでエージェントに伝え直すという運用でした。この4ステップが自律的に回るようになると、推薦の結果が、また次の採用基準の更新に戻ってきます。
選考 → 学習 → 要件更新 → エージェント共有 → 推薦 → 選考。
このループが継続的に回る状態です。人がAIを操作するのではなく、選考データが更新されるたびにAI側が次に必要なアクションを判断する。私たちは、こうした状態を採用業務の「オート(完全自動)化」と捉えています。
通過・見送り傾向をAIが分析するところまでは、現在のデモでも検証しています。一方で、その結果から採用基準を更新し、エージェントへのフィードバックまで自律実行する部分は、これから検証していく領域です。求人の大幅な変更のように影響の大きいアクションは人の承認を挟む一方、エージェントへの要件連絡のような定型性の高いやり取りは、自動で実行する運用を想定しています。この自動実行と承認のバランスについては、以前の記事で詳しく書いています。
採用AIエージェントが、人事を「伝達」から「意思決定とアトラクト」へ戻す
人事が時間を使うべきなのは、「もっとこういう人を推薦してください」と何度も説明することではありません。候補者と向き合い、その人を本当に採るべきか判断し、入社したいと思ってもらうことです。採用基準の更新とエージェントへのフィードバックがAI側で回るようになれば、人事は「伝達役」ではなく、「意思決定とアトラクト」に戻れます。
今回は、その第一弾としてエージェントコミュニケーションを取り上げました。選考結果を見て、「次にどんな人を送ってほしいか」をAIが考え、その内容をエージェントへ返す。そして次の推薦結果をまた学習する。
このループが回り始めると、少なくともエージェント経由の母集団形成は、「人事が都度フィードバックして改善する仕事」から、「AIが継続的に学習し、改善する仕組み」へ変わっていきます。
「AIが選考データから採用基準を学び、次の母集団形成まで自律的に改善する」その全体像をまとめた資料『採用AI完全自動化 入門ガイド』をご用意しています。

執筆者|ゆあさ bgrass株式会社|事業責任者 HR領域を中心に採用責任者、RPO、新規事業責任者、BizDev、COO等を経験。複数企業の採用現場で採用戦略・採用オペレーション・AI導入支援に従事。現在はRecruiting Agent OS「フェアパス」の事業責任者を担当。
