採用目標が増え、求人票も増えていく中で、採用基準の管理はより複雑になっていきます。
ある企業では、求人数は50件台。一方、契約している人材紹介エージェントは100社を超え、そこに外注した採用アシスタントや複数の面接官が関わっていました。この状態で求人ごとに採用基準を管理すると、要件を一つ変更するだけでも、求人票、AIの判定基準、人材紹介エージェントへの説明、面接官の評価基準をそれぞれ見直す必要があります。
AIを導入していても、求人ごとに設定を修正している限り、メンテナンス対象は減りません。フェアパスでは、求人票ではなく、その手前にある「採用要件」を共通の基盤として持つことで、この構造自体を変えようとしています。
こんにちは!bgrassでフェアパスの事業責任者をしている、ゆあさです。
最近、採用担当者から聞くことが増えたのが、こんな悩みです。 「AIを入れたのに、結局、求人ごとに設定を見直す作業が減らない」 なぜこの状態が起きるのか。今回は、実際の商談で聞いた話をもとに考えていきます。
AIが出した判定を、人事がもう一度確認している
先日、ある企業の採用責任者から、書類選考にAIを利用しているものの、その判定を完全には信用しきれていないという話を聞きました。求人票に記載されたMust・Wantを満たしていても、実際に書類を見ると「この経歴の並び方は少し気になる」と感じることがあるそうです。
例えば、転職回数、在籍期間、経験した企業の規模、職務経歴の一貫性。明文化された要件だけでは判断できず、担当者が書類を見て初めて気づく観点が残っています。この状態では、AIが一次判定をしても、最後は人事が同じ書類を確認します。AIを導入しても、人事の確認作業がなくならない理由の一つです。
問題は、AIの精度だけではありません。そもそも、人事や現場が使っている判断基準が十分に言語化されず、担当者の頭の中に残っているのです。
求人ごとに設定すると、同じ採用基準が複製されていく
採用基準は、採用選考において非常に重要な役割を担っています。
- 求人票に何を書くか
- 書類選考をどのように判断するか
- 人材紹介エージェントにどのような人材を推薦してもらうか
- 面接官が何を確認するか
- 面接の合否をどのように判断するか 本来、これらは同じ採用要件を参照しているはずです。ところが実際には、求人票、人材紹介エージェント向けの説明、面接評価シートが別々に管理されています。
そのため、採用要件を変更しても、一部にしか反映されません。AIの判定基準は更新したが、求人票は古いまま。面接官には伝わったが、人材紹介エージェントには以前の要件で推薦されている。求人やステークホルダーが増えるほど、こうしたズレが発生しやすくなります。
求人50件台、契約人材紹介エージェント100社超という規模になると、採用基準を維持する仕事そのものが、大きなオペレーション負荷になります。
管理すべきなのは、求人票ではなく「採用要件」
そこでフェアパスでは、求人票の手前にある情報を「採用要件」として分解して管理する設計を進めています。
例えば、次のような情報です。
- 職種・役割
- グレード
- 必要な経験・スキル
- Must・Want
- 書類選考の判断基準
- 面接で確認する項目
- 合否の判断基準
- 選考フロー さらに、これらを会社共通、部署共通、求人固有という階層に分けます。
会社全体で必ず守る基準なのか。特定の部署だけで必要な基準なのか。その求人だけに適用する条件なのか。この構造を持つことで、求人票は採用要件そのものではなく、採用要件を候補者向けに表現したものになります。人材紹介エージェントへの説明やAIの判定、面接官の評価項目も、同じ採用要件を参照して生成できるようになります。
要件を変えたとき、関連する情報をまとめて更新する
例えば、「マネジメント経験」をMustからWantへ変更するとします。
従来は、関連する求人票、AIの判定基準、人材紹介エージェント向けの説明資料、面接評価項目を探し、それぞれ修正する必要がありました。
採用要件を共通基盤として持てば、要件側で一度変更し、関連する情報の更新案をまとめて生成できます。
- 求人票の修正案
- 書類選考基準の更新
- 人材紹介エージェントへの変更連絡
- 面接官向けの評価項目 もちろん、採用要件を変更しただけで、100社を超える人材紹介エージェントの認識が自動的に変わるわけではありません。
重要なのは、すべてのステークホルダーに伝える情報の参照元を一つにすることです。要件変更のたびに、人が複数の資料や設定を一から書き直す状態をなくします。
フェアパスでは現在、応募データから求人の改善案を生成し、人が承認する仕組みを動かしています。その次の段階として、求人ごとの改善にとどまらず、採用要件を共通基盤として持ち、AIの判定や求人票、ステークホルダーへの説明へ反映する設計を進めています。
暗黙の判断基準を、どう要件に変えていくか
一方で、書類を見て初めて気づく細かな判断観点を、最初からすべて言語化するのは簡単ではありません。採用担当者や面接官の頭の中には、まだ言葉になっていない判断基準が残っています。
だからこそ、一度要件を登録して終わりではなく、実際の選考で発生した判断を振り返り、採用要件へ戻していく必要があります。
人がAIの判定を修正した理由を残し、次回以降の判断基準として再利用します。その繰り返しによって、個人の感覚だったものを組織の採用基準へ変えていきます。
ここは、フェアパスでもまだ試行錯誤している領域です。
人事が決めるべきなのは、プロンプトではなく採用基準
求人ごとにAIのプロンプトを調整し続けることは、本来、人事の仕事ではないはずです。人事が向き合うべきなのは、「どんな人を、なぜ採用するのか」「何を採用基準にするのか」という意思決定です。
100社を超える人材紹介エージェントとのやり取りを、AIで効率よくメンテナンスするだけではありません。そもそも、関わる相手の数だけ採用基準を個別に管理しなくてよい構造に変える。
求人票を直し続けるのではなく、すべての求人・AI・選考が参照する採用要件を整える。これが、AIを前提に採用組織を組み替えるうえで必要な設計だと考えています。
「まずは仕組みを知りたい」という方は、フェアパスのLPから資料をご覧いただけます。
「自社の求人・エージェント運用を、採用要件を基盤にした形にどう置き換えられるか具体的に相談したい」という方は、そのままデモをご予約ください。!

執筆者|ゆあさ bgrass株式会社|事業責任者 HR領域を中心に採用責任者、RPO、新規事業責任者、BizDev、COO等を経験。複数企業の採用現場で採用戦略・採用オペレーション・AI導入支援に従事。現在はRecruiting Agent OS「フェアパス」の事業責任者を担当
