【エグゼクティブサマリ】 「日程調整をお願いします」という同じ依頼でも、探すべき枠は候補者ごとに違います。条件を決める材料が社内にしかないため、実務を外に依頼しても確認の往復が発生します。フェアパスの導入現場で見てきた構造と、その判断をAIに覚えさせるとどうなるのかを書きます。

こんにちは。bgrassでBizDevを担当しているまいかです。

今週は日程調整に残るものをテーマに、イレギュラー対応、ツールを入れても消えない仕事、全員共通の配慮と書いてきました。

今回扱うのは、候補者ごとに答えが変わる判断です。昨日の配慮が「候補者なのか面接官なのかによって変わり、様々な配慮が立場ごとに変わるもの」だったのに対し、今回は「この候補者にはどうするか」を毎回決めているもの。ルールに書き出すだけでは解けない領域です。

採用現場に並走していると、何度も目にする光景があります。「〇〇さんの日程調整をお願いします」と一言で外部のアシスタントやRPOに依頼したはずなのに、その後に細かな確認のやり取りが何度も発生し、最終的に人事が自分でカレンダーを操作して実務を巻き取ってしまう。 「信頼して外に任せているはずなのに、結局自分で見直して、直して、調整している」

この構造の裏には、日程調整に潜む「候補者ごとに変わる条件」のジレンマがありました。

同じ「面接の日程調整」でも、探している枠は毎回違う

「日程調整をお願いします」 そう一言で依頼したとしても、受け取ったパートナーやアシスタントの側がすぐに動き出せないのは、決してホスピタリティの問題ではありません。

原因は、同じ選考フェーズであっても、目の前の候補者によって、探すべきカレンダーの枠の条件が毎回まったく異なっているからです。 具体的には、採用の現場で以下のような条件が候補者ごとに、かつその都度変化しています。

**誰のカレンダーを見るべきか(面接官の選定) ** 通常の一次面接なら人事担当者1名でよいけれど、「この候補者は技術的な話が盛り上がりそうだから、今回は現場のエース面接官も同席させて2名分のカレンダーを押さえよう」といった判断がその場で発生します。

**何分の面接枠を探すか ** 通常の選考は45分枠でスピーディーに回すけれど、「この候補者はこれまでの職歴がかなり深いため、丁寧に見極めとアトラクトを行うために60分枠を確保しよう」と変更します。

**どこまで先の期間のカレンダーを見るか ** 他社の選考がすでに最終フェーズまで進んでいる候補者であれば、2週間先の日程を提案している場合ではありません。今週中のカレンダーを最優先で確認する必要があります。

**どの時間帯を優先的に出すか(候補者への配慮) ** 在職中で日中は動けない候補者であれば、平日の10:00〜18:00の空き枠を提案しても意味がありません。19時以降や朝の早い時間帯の枠を厚めに探す必要があります。

これらは、決して珍しいハプニングやトラブルではありません。採用活動をしていれば、毎日ごく普通に発生している「通常運転の中のイレギュラー」です。 この条件が毎回変わるからこそ、一律で空き時間リンクを生成して送るだけの日程調整ツールでは対応できず、誰かの手作業による判断が挟まざるを得なくなっています。

決めている細かさは、会社によって全然違う

さらにこの問題を難しくしているのが、「面接官のアサインや調整ルールをどこまで細かく決めているか」という基準が、会社によって全然違うという事実です。 さまざまな現場に伴走するなかで、そのグラデーションを目にしてきました。

ポジションや求人ごとに「この職種の一次面接は◯◯さん、二次は◯◯さんと◯◯さんの掛け合わせで、時間は◯分」と、アサインのマトリクスを細かく設計している会社もあります。一方で、明確なマトリクスは作らず、その都度、候補者のレジュメや状況を見て「今回の一次面接は現場の◯◯さんにお願いするのがよさそうだな」と、担当者が判断している会社もあります。

どちらのやり方が正しいという話ではありません。会社の規模や採用フェーズによって、最適な「決まり方の細かさ」は異なるという事実です。

ただし、どちらの会社にも共通していることがあります。日程調整の条件を決めるための材料(面接の感触・他社の選考進捗・社内の人間関係)は、社内にしかないという点です。

「先日の面談、候補者の熱量がすごく高かったから、次の二次面接はアトラクトに一番強いエースをアサインしたい」 「現場の面接官が今週タスクで詰まっているから、今回は予備の担当者にアサインを切り替えよう」

こうした文脈は、社外のカレンダーやマニュアルには載っていません。 そのため、どれだけ日程調整の実務を外に依頼しても、「今回は誰を、何分で、いつのアサインにするか」という条件を決定する部分は毎回人事の手元に残り、結果として確認のやり取りが何往復も発生することになります。

昨日書いた全員共通の配慮はルールとして書き出せますが、「この候補者の温度感なら、誰を何分でいつアサインすべきか」という個別の判断は、静的なマニュアルを置くだけでは解くことができません。

ルール化しても、手戻りの構造は残る

「だったら、その臨機応変な判断もある程度パターン化してルールブックに書き出しておけば解決するのでは」 そう思われるかもしれません。実際、ルールにできる部分はたくさんあります。

  • このデザイナーポジションの一次面接は現場2名同席で45分
  • 他社選考が進んでいる最優先候補者は、今週中に枠を確保する
  • 経歴が深い候補者は60分枠を確保する このように、ルールを整備すること自体は可能です。しかし、いざ運用を始めてみると、確認のやり取りが往復し、手戻りが発生する構造そのものは変わらないという現実にぶつかります。理由は2つあります。

① 実際の依頼は、ルールの「隙間」に落ちるものばかり

どれだけ精密なマニュアルを作っても、書けるのは典型的なパターンだけです。 「ルール上は現場2名同席だけど、2人の予定が今週1時間も重なっていない。この場合はアサインを1名に減らしてスピーディーに進めるべきか、それとも面接官を別の予備メンバーに切り替えるべきか」 こうしたルールの隙間に落ちる個別ケースが発生するたびに、どのルールを適用すべきか、誰の判断を仰ぐべきかという社内確認が発生します。

② ルール通りであっても「確認のコスト」は消えない 仮にルール通りにアサインできたとしても、受け取る側には不安が残ります。 「今回はルール通りにエース担当者でアサインしますが、この認識で合っていますか」 「今週の枠が埋まっていたので、予備のメンバーで進めてよいですか」

こうした確認のための1往復が、候補者一件ごとに毎回発生します。 一件あたりの確認は、チャットを数通やり取りするだけの数分かもしれません。しかし応募数が月100件、200件と増えていくにつれ、この確認が積み上がり、ルールを機能させるための確認のコミュニケーションコストそのものが、人事の新しい実務タスクになっていくのです。

どれだけルールを整備しても、この確認の往復による手戻りの構造を変えるのは、構造的に難しいのが実情です。

フェアパスも、まずはルールを設計してAIに実行させる

では、この確認と手戻りのループからどうやって抜け出すのか。 フェアパスでも、アプローチのスタートラインは同じです。

まず、私たちのエンジニアであるFDE(が採用現場に深く入り込み、これまで明文化されていなかった「アサインのルール」や「隙間に落ちたときのリカバリの基準」を一つひとつ対話の中で紐解き、AIの自律駆動のロジックとして事前に実装するというプロセスを挟みます。

たとえば、並走するある企業では、以下のようにアサインを実装しています。

  • 候補者の特性(一次面接の評価等)を、候補者ごとの傾向に合わせた複数パターンのタイプに分類する
  • タイプに応じて、最適な2名の面接官を自動で掛け合わせてアサインする(タイプAなら面接官Xさん+面接官Yさん、合わなければ予備の面接官へ)
  • ただし1週間以内に予定が埋まっていて2名アサインが厳しい場合は、自動的にサブの面接官に切り替える、もしくは1名同席のみに変更し、その代わりに面接時の録画・書き起こしを必須とするリカバリルールを適用する
  • 他社選考が進んでいるなど優先度が高い場合は、面接官のカレンダー上で予定が埋まっていても、社内ミーティングなど動かせる予定の上に自動で面接を重ねて登録する ここまでは、ルールを渡して実行してもらうという意味で、人に任せる構造と同じです。

しかし、ここから先の挙動が決定的に異なります。 フェアパスは、そのルールに基づいて実行しながら、ルールの隙間に落ちたケースを人間がどう処理したかを、一つひとつの操作のなかで覚えていきます。

最初は、FDEが実装したデフォルトのルールに基づいて動きます。その中でルールの隙間に落ちるイレギュラーが発生した際、人事がチャットで「この候補者、今回は◯◯さん1名で調整して」「この時間は社内MTGだけど、最優先だから被せて差し込んで」と短い指示を出します。 AIは、その個別判断の文脈を裏側のデータと紐付けて記憶し、学習していきます。

私たちは毎回、AIが作成した下書きを送信する前に確認します。ただ運用が回っていくにつれて、カレンダーを開いて確認したときには、すでに人事が想定した通りのアサインや時間帯で下書きがセットされている頻度が上がっていくのです。 言葉にしきれなかった配慮が、日々の実務を通じてAIに定着していく。これにより確認の往復コストは最小化され、AIの自律駆動の範囲がグラデーションのように広がっていきます。

溜まったデータが、次の打ち手になる

自社ならではの「面接の組み方」や「アサインのルール」がAIに定着し、手戻りなく安定して回るようになったその先。実は、そこからが本当の採用変革の始まりです。

これまでは、誰のカレンダーがどう動いたか、誰にどうアサインしたかという調整プロセスのデータは、各担当者の頭の中やチャットの往復、個別のカレンダーの中に埋もれてしまい、記録として残りませんでした。

しかしフェアパスを導入してAIが裏側ですべてのプロセスを実行し、データを一本の線に繋げたことで、日程調整という実務そのものが、次の採用戦略を打つための意思決定データへと姿を変えます。

運用が続くほど、以下のようなファクトが可視化されるようになります。

  • どのポジションで、どの面接官がどれくらいアサインを負担しているか(特定のエースへの負荷の偏りを未然に防ぐ)
  • 他社の選考状況を考慮して優先度を上げた候補者は、実際にどれだけリードタイムが短縮され、内定承諾率に繋がったのか
  • 45分から60分に枠を延ばした面接は、実際にアトラクトに機能し、通過率や志望度の向上に繋がったのか 「なんとなくあの面接官がアトラクトに強い気がする」「なんとなくこの組み方のほうがよさそう」という主観ではなく、このタイプにはこの面接官をこの枠でアサインしたときに最も承諾率が上がるという、データに基づいた採用活動を設計できるようになります。

複雑な「面接の組み方の判断」はAIに覚えさせて安定させ、それによって浮いた時間を使って、人間にしかできないアトラクトと合否の最終意思決定に120%フルベットする。 これこそが、候補者の熱量を最大化したまま、欲しい人材を取りこぼさない「AIネイティブな採用組織」のあり方だと考えています。

とはいえ、いきなりすべてをAIに任せる必要はありません。まずは自社の日程調整の中で、どの判断が外に渡せていないのかを言葉にするところからです。 ホワイトペーパー『現場に残ってしまうタスクをどうAI化するか』では、自社の日程調整で言語化されていない判断基準を洗い出すチェックリストと、任され方によって残るタスクがどう変わるかを整理しています。まずは自社にどんな判断が残っているか、確認してみてください。

**▼ 現場に残ってしまうタスクをどうAI化するか **

▼テキストプロフィール 執筆者|まいか bgrass株式会社|BizDev 採用AIエージェント「フェアパス」の導入現場で、採用オペレーションの設計・改善支援に従事。フリーランスとしても複数企業の採用支援・採用戦略立案を担当し、採用実務とAI活用の両面から現場に伴走している。