採用コスト削減は、相場を調べてから媒体を変えたり外注を切ったりする前に、「可視化→特定→構造の組み替え→段階移行」の順で進めるのが土台になる。いきなり施策から入ると、一時的にコストが下がってもすぐに元の水準に戻りやすい。
採用コスト削減の進め方は、どう考えればいいか
進め方の結論は、可視化・特定・構造の組み替え・段階移行という4つのステップを順番に踏むことであり、媒体変更や外注解約といった個別の施策から着手しないことが前提になる。
フェアパスが提唱する「AI駆動採用」とは、採用担当者が便利なAIツールを使うことではなく、組織内に「AIエージェント」という新しい労働力が存在する前提で、採用組織・業務プロセス・コスト構造をゼロから組み直す考え方である。コスト削減もこの一部として位置づけられる。
この考え方の中心にあるのが、「コスト構造の組み替え」という視点である。これは、人件費・外注費・AIトークン費(AIが稼働した分だけかかる変動費)を同列に並べ、どこにコストを配分し直すかを決める作業を指す。あわせて「仕事の配分の組み替え」(人を母集団形成・アトラクト・見極め・意思決定に配置転換する)と「組織図の組み替え」(AIが準備・実行するオペレーションを監督・承認する役割を置く)も合わせて進めることで、単なる値引き交渉や媒体の見直しとは異なる、継続的なコスト構造の変化を作ることができる。
採用コストの一般的な相場を先に知っておく
採用コストは採用手法によって大きく異なり、民間の紹介会社を使うと正社員1人あたり85.1万円・非正規社員19.2万円かかる一方、求人媒体やSNS経由ではそれよりかなり低くなる。自社の可視化に進む前に、まずこの相場感を押さえておく。
| 採用手法 | 正社員 | 非正規社員 |
|---|---|---|
| 民間職業紹介(紹介会社) | 85.1万円 | 19.2万円 |
| 求人情報誌・チラシ | 11.3万円 | 7.7万円 |
| SNS | 0.9万円 | - |
| 自社HP等からの直接応募 | 2.8万円 | - |
| 知り合い・社員等からの紹介(縁故) | 4.4万円 | - |
[出典: 厚生労働省委託調査(三菱UFJリサーチ&コンサルティング「令和3年度厚生労働省委託調査 採用における人材サービスの利用に関するアンケート調査 報告書」)、doda人事ジャーナル記事経由。手法別の内訳はdoda記事内引用のため、元調査名・年度の詳細は未確認]
さらに、就職みらい研究所「就職白書2020」では、新卒採用の平均採用単価が93.6万円、中途採用が103.3万円と報告されている[出典: 就職みらい研究所「就職白書2020」]。
ただし同じ「中途採用コスト」という言葉でも、集計範囲によって数値は大きく変わる。就職白書2020の103.3万円は内部コスト(人件費等)を含む総額ベースである一方、マイナビの別調査では求人広告費のみを算出範囲とした場合31.2万円と報告されている[出典: マイナビ調査、二次記事経由]。相場を比較する際は、内部コストを含むかどうかを確認してから数値を扱う必要がある。
STEP1:採用コストを「人件費・外注費・AIコスト」で可視化する
可視化の第一歩は、募集ポジションごとに外部コスト・内部コストを分けて表にまとめることであり、AIを使う場合はそこに「AIトークンコスト」を第3の費目として加えることが次のポイントになる。
- 募集ポジションごとに外部コスト・内部コストを一覧化する:採用手法・利用サービス・コスト・1人あたりの採用単価をExcel等の表にまとめ、俯瞰できる状態にする[出典: doda(パーソルキャリア)採用ガイド]。
- 人件費・外注費に加えて「AIトークンコスト」を独立した費目として扱う:フェアパスのモデルケースでは、月次コストを人件費・外注費・AI/ツール費の3費目に再配分すると、月額約105万円(人件費50万円・外注費40万円・AI/ツール費15万円)から約65万円規模(人件費40万円・外注費5万円・AIトークンコスト20万円)へ組み替わる構造が試算として示されている。これはフェアパスの試算によるモデルケースであり、特定企業の実績値ではない。
- 固定費中心の構造を、変動費を含む構造に組み替える前提で記録する:外注費を「月次の固定費」としてそのまま見るのではなく、AIトークンコストのように「稼働した分だけかかる変動費」を別枠で捉えることで、削減余地がどこにあるかが見えやすくなる。
STEP2:コストが膨らんでいる業務をチェックリストで特定する
コストが膨らんでいる業務を特定するには、応募対応量・属人化・データ分断など6つのカテゴリ×各5項目、合計30項目の自己診断チェックリストが使える。該当数が多いほど、AI駆動採用への移行余地が大きいと判断できる。
- 6カテゴリ×30項目のチェックリスト:応募対応量/属人化/データ分断/面接官連携コスト/暗黙知/本来業務への集中、の6カテゴリでそれぞれ5項目をチェックし、該当0〜8個なら移行優先度は低め、9〜18個なら部分的なAI活用で効果が出やすい、19〜30個ならAI駆動採用への移行余地が大きい、という3段階で判定する。
- すでに特化型AIを導入している企業向けの7項目チェック:特化型AIを1つ以上導入している/AIの前後に手作業が残る/候補者情報が複数ツールに分散している/確認・転記・催促が減っていない/ツール追加で管理画面が増えた/人事が候補者対応よりオペレーションに時間を使っている/AIを個別ツールの導入として捉えている、という7項目のうち3つ以上当てはまる場合、次に必要なのは新しい特化型AIの追加ではなく、採用実務全体を統合する仕組みである。
- 特化型AIを入れても残る「あいだ」の業務:AI面接のような特化型AI(Point Solutions)は工程の"中"を速くするが、転記・日程調整・評価回収・リマインド・引き継ぎといった工程の"あいだ"は人に残りやすい。AI面接を導入しても、日程調整や面接官アサイン、評価の回収・記録は人の手で行われているケースが典型例として挙げられる。
- 現場フローのうち生成AIが担うのは1ステップだけ:返信受信→返信文章の生成→メーラーへの貼り付け・送信→ATSステータス変更→カレンダー登録→面接官へのSlack連絡、という典型的な6ステップのうち、生成AIが担うのは「返信文章の生成」の1ステップのみで、残り5ステップは人が手動で対応しているという整理がある。
ATSは記録し、AIエージェントが仕事を進める。「AI ATS」の次に起きること では、ATSに蓄積された記録とAIが実行する業務の役割分担についてさらに整理している。
STEP3:コスト構造を組み替える(人件費・外注費・AIトークン費の再配分)
コスト構造の組み替えとは、人件費・外注費・AIトークン費を同列に並べ直し、実行業務をAIに移すことで外注費を減らし、空いた人の時間を母集団形成や見極めに再配分することである。これは「コスト構造」「仕事の配分」「組織図」の3つを同時に組み替えるフレームワークの一部として位置づけられている。
実行手段ごとの違いを比較すると、次のようになる。
| 評価軸 | ATS | 生成AI | RPO | 採用AIエージェント |
|---|---|---|---|---|
| 文章作成の工数削減 | △ | ◎ | △ | ◎ |
| 実行まで行えるか | ✗ | ✗ | ◎(人が実行) | ◎(AIが実行) |
| 自社へのノウハウ蓄積 | △ | ✗ | ✗ | ◎ |
(評価記号はbgrassによる定性的な評価。コスト感の比較は本表から除外している)
この組み替えを技術的に成立させるには、①データの一元管理、②システム間の双方向連携、③AI実行層の実装、という3つの要件が揃っている必要がある。どれか1つが欠けると、AIが「実行」まで担えず、結局は人の確認・転記作業が残ってしまう。
STEP4:既存のATS・RPOを残したまま段階的に移行する
移行は既存のATSやRPOを解約せず、フェーズ1(部分導入)→フェーズ2(実行業務の移管)→フェーズ3(一気通貫のAIネイティブ統合)という3段階で進めるのが現実的である。
- フェーズ1:部分導入:一部の求人・定型業務から始め、既存のATS・RPOはそのまま残す。
- フェーズ2:実行業務の移管:AIが担う範囲を拡大し、外部委託は繁忙期の専門支援や例外対応に絞る。
- フェーズ3:AIネイティブ統合:応募受付からデータ更新まで一気通貫でAIが担い、既存ATSは記録の正本として残る。
各フェーズに入る前の実務的な初期ステップとしては、現状の採用フローを棚卸しして最大のボトルネックを特定する作業(1〜2週間が目安)、書類選考の通過基準をMUST条件として言語化してAIに渡す作業(1〜2週間が目安)、日程調整や候補者対応など判断の入らない実行業務から自動化を始める作業(1週間〜が目安)という順序が示されている。これらの期間はあくまで目安であり、企業の状況によって変わる。
工数配分がどう変化するかのイメージとしては、導入前はオペレーション60%・採用実務20%・面接20%という構成が、フェーズ1後にはオペレーション5%・実務25%・面接70%、フェーズ2後にはオペレーション5%・実務10%・面接50%・事業成長への投資35%、フェーズ3後には実務5%・面接50%・投資45%という構成に変わるというモデルが示されている。これはWP内の「1日の例」をもとにした構成比のイメージであり、実際の比率は企業により異なる。
どこから着手するかは自社の状況によって異なり、外部委託(RPO・BPO・採用アシスタント)に月次費用を払っている企業は外部委託の最適化から、上場企業や大規模組織は基幹ATSとの連携から、少人数〜ひとり人事の企業はオペレーション逼迫の解消から入るパターンが整理されている。
内製するか外部の支援体制を使うかは、緊急性(本番環境が短期間で必要か)、独自性(自社固有の判断基準があるか)、保守性(作った後も運用し続けられる体制があるか)という3つの問いで判断できる。内製化の本質は実行のソフトウェアを自社で書くことではなく、判断基準を言語化して渡せる状態にすることにある。この判断基準の実装を外部のエンジニアが担う形として、フェアパスでは共通基盤が提供体制の約8割、FDE(現場に入り込むエンジニア)による個社最適が約2割という構成をとっており、そのFDE供給の背景には3,500人規模のエンジニアコミュニティがある(bgrass社内データ・自己申告)。
段階移行の設計についてさらに詳しくは、スイッチングコストゼロ 採用AI設計図 ── ATSを乗り換えずに進める3段階のAI実装 でも解説している。
実際にどれくらい削減できるのか:試算例
匿名企業の試算では、月間応募数や体制によって月額約140万円→約75万円、約70万円→約17万円などの再配分例が報告されている。いずれも匿名企業の事例・一部シミュレーション値であり、自社にそのまま当てはまるとは限らない。
| 対象企業 | 応募規模の目安 | As-Is月額 | To-Be月額 | 削減額の目安 |
|---|---|---|---|---|
| 匿名1社 | 月間約400〜500件 | 約140万円(人件費50万円・外注費約75万円・ATS等15万円) | 約75万円(人件費40万円・AIトークン費等30万円・外注費5万円) | 約65万円 |
| A社 | 月30〜50応募 | RPO約40万円 | AIトークン費約17万円(ATSは残し月額約23万円) | 約23万円 |
| B社 | 月150〜300応募 | RPO約70万円+ATS約8万円=約78万円 | AI費約8万円+ATS約8万円=約16万円 | 約62〜63万円 |
| C社 | 月約140応募 | 2名体制で月約70万円 | AIトークン費約17万円 | 約53万円(オペレーション工数1/4) |
これらの試算の詳細は、AI RPOのその先へ今のやり方をを変えずに【月140万→75万】へ。1求人から始める採用組織全体の効率化とコスト削減のロードマップ と AI ATSで採用コストはどこまで削減できる?ATS+AIの費用対効果を3社の事例で解説 で解説している。
よくあるつまずきと回避策
つまずきの多くは施策そのものではなく、管理画面がなくなる不安・AIへの不信感・現状維持バイアスといった心理的な抵抗から生じる。
- 管理画面がなくなることへの戸惑い:これまで見ていた管理画面がなくなることに不安を感じるケースがある。
- AIへの不信感:勝手に変なメールを送らないか、個人情報を適切に扱えるかといった不信感が障壁になる。
- 現状維持バイアス:「今のままでいい」という感覚が、着手自体を遅らせる要因になる。
- 全面的な乗り換えへの恐怖(最大の壁):一気にすべてを切り替えることへの抵抗が、段階移行ではなく施策の先送りにつながりやすい。
これらを避けるには、AIの動き方を「オートモード」と「承認モード」の2種類に分けて設計するという考え方がある。定型的で間違えてもすぐ修正できる業務(日程調整、リマインド、エージェントへの要件共有など)はAIが判断してそのまま実行するオートモードに、求人内容の大幅な変更や採用方針に関わる判断のように対外発信や影響の大きい業務は、AIが案を作り人が確認してから実行する承認モードに振り分ける。
あわせて、性別・年齢・国籍といった属性を見送り判断の材料としてAIに委ねることには明確なリスクがあり、属性に基づく判断は常に人が行うべき領域として切り分けておく必要がある。
これらの設計は、Human-in-the-Loop(人の確認・承認を残す運用)という考え方の再定義とも重なる。Human-in-the-Loopは「人がすべてを操作する」という意味ではなく、AIがデータをもとに次のアクションを考えて業務を進め、重要な判断だけを人が行う状態を指す。人が関わる場所を「作業」から「判断」に移すことが、コスト削減と品質・公平性の両立につながる。詳しくは 採用AIエージェントは、どこまで自律して動けるのか? 人は「操作」から「判断」へ で解説している。
まとめ:採用コスト削減は、①自社のコストを可視化する→②コストが膨らんでいる業務を特定する→③人件費・外注費・AIコストの構造を組み替える→④既存のATSやRPOを残したまま段階的に移行する、という順番で進める。媒体変更や外注の即解約だけでは一時的な削減にとどまりやすい。
FAQ
Q. 採用コスト削減の取り組みは、社内の誰が主導すべきですか? A. フェアパスのフレームワークでは、AIが準備・実行するオペレーションを監督・承認する「AIディレクター」という役割を組織図に置くことを推奨している。採用担当者が実行作業から離れ、判断と基準設計に専念できる体制が前提になる。
Q. 自動化が実際に運用に乗ると、現場にはどんな変化がありますか? A. 導入トライアルの現場レポートでは、管理画面を見なくなる、連絡漏れや更新漏れがなくなる、催促を考えるストレスがなくなる、という3つの変化が報告されている。コスト削減の数字だけでなく、こうした定性的な変化も進め方を検討する材料になる。
自社の採用コスト構造がどこで膨らんでいるか、30項目のチェックリストで診断してみませんか。自社の応募規模・体制に近い移行パターン(部分導入/基幹ATS連携/オペレーション逼迫の解消)のどれから始めるべきかを、ぜひ確認してください。 https://lp.fair-path.jp/
著者:フェアパス編集部
この記事は、AIを使って作成し、編集部が内容を確認しています。