【エグゼクティブサマリ】 日程調整を外部に任せても、候補者や面接官への「配慮」に関わる部分だけは人事の手元に残ります。理由としては、その配慮が細かすぎて書き出せず、しかも毎回少しずつ違うからです。フェアパスの導入現場で見てきたこの構造と、配慮をどう仕組みに変えるべきかを書きます。
こんにちは。bgrassでBizDevを担当しているまいかです。
私たちは「人事の仕事を面接だけにする」を掲げて、会話型採用オペレーションAI「フェアパス」を開発・運営しています。 日々さまざまな急成長企業やベンチャーの採用現場に入り込んで並走しているのですが、そこで何度も目にしてきた共通の光景があります。
面接においての日程調整の実務はRPOや外部のアシスタントに任せているはずなのに、なぜか人事が自分の手でカレンダーを細かく調整し直しているという光景です。 「外に任せているはずなのに、結局自分で見直して、直して、送り返している」 この、人事の手が止まってしまう構造の裏には、日程調整という業務に潜む「配慮」のジレンマがありました。
今週bgrassでは、この日程調整をテーマに記事を出しており、面接の日程調整を任せても、イレギュラー対応は人事に残るでは手戻りが起きる構造そのものを、日程調整ツールを入れても、面接調整の仕事は消えない理由では商談で聞いた担当者自身の声を扱っています。
今回はそこから視点を変えて、手元に戻ってくるものの正体である「配慮」に焦点を絞り、どういうことに配慮が起きるのか、そしてどうすれば手元から構造的に離すことができるのかを書きたいと思います。
日程調整を任せていても、配慮の部分だけ戻ってくる
「日程調整はすべてRPOさんにお願いしています」 「日程調整ツールを導入しているので、オペレーションからは離れられているはずです」
商談の場ではそう語られることがよくあります。しかし実際の現場をのぞいてみると、提示された候補日を人事が1件ずつ細かく確認し、手作業で修正しているケースが驚くほど多くあります。
実務を外にお願いして、本来向き合うべき採用戦略や候補者との対話に集中できるはずだったのに、なぜか手戻りが発生してしまう。 それは、日程調整という一見単純に見えるオペレーションの中から、候補者や面接官に対する「配慮」に関わる部分だけが、人事の手元に残り続けているからです。
実際に見直しているのは、こういう部分だった
人事がカレンダーを開いて、1回あたり数秒から数分かけて手作業で直している「配慮」とは、具体的にどのようなものでしょうか。 私たちが並走する現場では、以下のような個別調整が日常的に発生していました。
候補者への配慮
在職中で忙しい候補者に対して、平日の日中ばかりが第一候補として提示されていないか
候補者の前職の退勤時間や移動時間を考慮して、19時以降の枠を厚めに添えられているか
他社選考が進んでいる候補者に対しての面接候補日が先の日程になりすぎていないか 面接官への配慮
社内の面接官のカレンダーに、同じような面接が連続で3件も入っていないか
お昼休みをまたぐような時間枠の指定になっていないか
直前の会議の直後に面接が入っていて、面接官が候補者のレジュメを読む時間がないまま面接に入るスケジュールになっていないか これらはどれもハプニングではなく、採用活動において毎日ごく普通に発生する個別調整です。
「面接可能な枠を事前にブロックしておけば済む話では」と思われるかもしれません。実際そうした運用をしている企業もあります。 ただ、ブロックが効くのは決まった流れで進んでいる間だけです。 面接官が急に変わる、同席者を追加したい、候補者の都合で組み直す。こうしたイレギュラーが起きた瞬間、確保した枠の外で調整するしかなくなります。
そして枠が空いていても、配慮の判断は残ります。連続3件になっていないか、会議の直後になっていないか、この候補者には夜の枠を出すべきか。ブロックは「使える時間」を決めるだけで、そのうちどの枠を誰にどう出すかまでは決めてくれません。
一つひとつは、「ここは19時に変えておこう」「面接官のこの枠はずらそう」と、数秒で気づいて直せることかもしれません。しかし応募数が増え、候補者とのやり取りが重なるたびに、これが毎回発生します。 結果として、「修正の意図を書いて伝えたり、自分でカレンダーを確認したりするくらいなら、最初から自分で組んだ方が早い」となり、人事が手作業からいつまでも抜け出せなくなってしまうのです。
同じ理由でイレギュラー対応も手元に残る構造は、面接の日程調整をAIに任せても、イレギュラー対応は人事に残るで詳しく書いています。
配慮が渡らないのは、細かすぎて書き出せないから
なぜ、外にお願いしているのにこの「配慮」が手戻りしてしまうのでしょうか。
これは、RPOの担当者やアシスタントの側の問題ではありません。原因は、これらの配慮は細かすぎること、また担当者が無意識に行っていることも多いため、マニュアルとして切り出すことが難しい領域になります。
「連続3件の面接は避ける」 「在職中の候補者なら、夜の枠を厚めにする」 「直前の会議がある時は前後15分あける」
こうして書き出せば単純なルールに見えます。しかし実際には、毎回少しずつニュアンスが違います。 同じ「在職中の候補者」でも、志望度が高くて時間を作ってくれそうな人と、他社の選考も並行していて余裕がなさそうな人とでは、出すべき枠の厚みが変わります。同じ「連続3件を避ける」も、面接官が今週タスクで詰まっているかどうかで判断が変わります。
人事はこれを、経験から無意識に、その都度調整しています。だからこそ、一度説明して終わりにすることが構造的にできません。 結果として、書き出せない「配慮」に関わる部分だけが、渡しきれずに人事の手元へ残り続けることになります。
ただ、人がやれば正解になるわけでもない
では、「やはり人間が手作業で、一つひとつ配慮しながら日程調整をするのが一番いいのか」というと、実はそうではありません。ここが、採用を本質的に変える上で最も直視しなければならない論点です。 配慮を「人間の善意」や「その時のコンディション」に依存させている限り、以下のようなムラが避けられません。
**忙しい日は、配慮が抜ける ** 他のトラブル対応や割り込みタスクで手一杯になっている日は、連続3件の面接アサインをそのまま通してしまい、面接の質が下がる。
**担当者によって、気にするポイントが違う ** Aさんは候補者の移動時間をすごく気にするが、Bさんは面接官のランチタイムを重視する。人によって配慮の基準がブレる。
**応募が増えるほど、一人あたりにかけられる注意が減る ** 月10件の応募なら完璧に配慮できても、月100件、200件と応募が増えれば、一人ひとりのカレンダーを数分間確認して気を配る余力は物理的に限界を迎える。

人間の善意や頑張りに依存した配慮は、本質的に不安定なものです。 候補者から見れば、たまたま人事が忙しくない日に当たれば丁寧で配慮の行き届いた案内が来るけれど、たまたま人事が忙しい日に当たれば、配慮の抜けた機械的な日程が提示されるということになります。これは、候補者に向き合う姿勢として、本当に公平で誠実だと言えるでしょうか。
だから、配慮はAIに教え込んでいく
私たちは、日程調整における「配慮」を諦めるべきだとはまったく思っていません。むしろ、その会社ならではの温かみや気遣いは、採用において絶対に手放してはならない大切な要素です。 だからこそ必要なのは、配慮を人の善意やコンディションに依存させるのをやめ、ルールとして書き出し、AIに実装することです。
「在職中の候補者なら、夜と朝の枠を最初から厚めに提案する」 「同じ面接官に、連続3件以上の面接はカレンダーが空いていても入れない」 「会議直後の枠は避け、前後15分のバッファを自動的に確保する」
こうした判断基準を最初からシステムに実装しておけば、誰が担当しても、どんなに忙しい日であっても、すべての候補者に対して同じクオリティの配慮が、仕組みとして安定して担保され続けます。
フェアパスでは、システムをただ渡して設定してもらうのではなく、FDEが貴社の採用現場に深く入り込みます。 これまで書き出せなかった、人事の頭の中にしかなかった「言われてみれば、無意識にこういう気配りをしてカレンダーを直していた」という配慮を、FDEが一つひとつ対話の中で聞き出し、AIの自律駆動ルールとしてカスタム実装していきます。
これまで渡しきれなかった配慮を、AIが最初から理解している仕組みに変えていく。 配慮を人のコンディションに頼る不安定なものから、仕組みとして確実に稼働する安定したものへ変えていく。そうして日程調整を任せきることで、人事の仕事を面接と意思決定だけにしていく。これが、私たちが目指すAIネイティブな採用組織のあり方です。
**▼ 自社の配慮のルールをどう実装するのか、解決策と導入パターンを確認する **

執筆:まいか/bgrass株式会社 BizDev 採用AIエージェント「フェアパス」の導入現場に入り込みながら、採用担当として企業の採用支援・採用戦略立案も担当しています。
