生成AIに候補者情報を入力した際の誤送信・漏洩は、AIが文章を生成する瞬間ではなく、その前後にある人の手作業(コピペ・転記・共有)で起きることが多い。防ぐには入力前のマスキングや社内ルールの整備といった運用面の対策に加えて、手作業の工程そのものを減らすという構造面の対策がある。

生成AIで候補者情報が漏れる・誤送信されるのはどの工程か

事故が起きているのは、AIが回答を生成する瞬間ではなく、その前後にある「履歴書を貼り付ける」「出力をコピーする」「共有リンクを送る」といった人の手作業の工程である。採用現場で生成AIを使う典型的なフローは、候補者からの返信を受けて、返信文章を生成し、メーラーに貼り付けて送信し、ATSのステータスを変更し、カレンダーに登録し、面接官にチャットで連絡する、という流れになる。このうち生成AIが担うのは「返信文章の生成」の1ステップだけで、残りは人が手動で対応している[出典: フェアパス「Claude・ChatGPT 採用活用 実態レポート」2026年6月]。

実際に起きている事故も、この「手作業の部分」に集中している。

  • 国内のある採用担当者(記事内ではO社として匿名化)は、応募者の氏名・住所・電話番号・学歴・職歴・写真を含む履歴書をそのまま生成AIにアップロードして要約させていた[出典: jtrustc.co.jp「生成AIの業務利用と個人情報保護」]
  • 生成AIサービスの共有(公開リンク)機能で作成されたチャット内容が検索エンジン経由で発見できる状態になり、業務文書や個人情報を含む可能性のある会話内容が意図せず公開された事例がある[出典: NTN「生成AIにより情報が漏洩した事例」]
  • 海外では、サムスン電子のエンジニアが機密情報であるソースコードを生成AIに入力したことで情報が流出し、同社がAIチャットボットの社内利用を禁止した事例がある(2023年4月発生とされる)[出典: HubSpot Japan「生成AIで情報漏洩は起こる?」]

いずれも、AIの出力結果そのものが問題だったわけではない。「入力する前に何を貼り付けるか」「出力した後にどこへ送るか」という、人が担う部分で情報が広がっている。

関連して、候補者情報を生成AIに入力する際に社内でどう線引きすべきかは、生成AIに候補者情報を入力する社内ルールの作り方で整理している。

なぜ採用業務では手作業のコピペ工程がなくならないのか

採用担当者の業務は「判断」よりも「実行」が多くを占めており、生成AIを個別のツールとして導入しても、入力・転記・共有という実行部分はそのまま人の手に残り続けるためである。

採用担当者の主な業務を候補者情報の確認・集約、日程調整のメール往復、面接評価の記録・転記、選考進捗の共有、候補者フォローメールの送信、書類選考の評価、最終合否の意思決定の7つに分けた場合、このうち「判断」にあたるのは書類選考の評価と最終合否の意思決定の2つだけで、残る5つは「実行」にあたる[出典: フェアパス「AIオペレーターとしての採用担当者 設計図」2026年6月]。

特化型の生成AIサービスを個別に導入しても、この構造は変わらない。特化型AI(Point Solutions)は工程の「中」、つまり文章を作る・候補者を探すといった作業そのものは速くするが、工程の「あいだ」にある転記・日程調整・評価回収・リマインド・引き継ぎは人の手に残る。たとえばAI面接ツールを導入しても、日程調整・面接官アサイン・評価の回収・記録は人が担うことになる[出典: フェアパス「AIネイティブ採用組織への移行ガイド」2026年7月]。

誤送信・漏洩のリスクが温存されるのは、まさにこの「あいだ」の部分である。生成AIが文章を作るところだけを速くしても、その前後で履歴書をコピーして貼り付け、出力をコピーして別のツールに貼り付ける、という手作業自体はなくならない。

候補者情報を生成AIに入力することは法律上どう扱われるか

候補者情報を含むプロンプトを生成AIに入力すること自体を禁じる法律は現時点でないが、個人情報保護法は利用目的の範囲内であることの確認と、機械学習等への無断転用がないことの確認を求めている。

個人情報保護委員会は「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等」(2023年6月2日公表)において、個人情報取扱事業者が生成AIサービスに個人情報を含むプロンプトを入力する場合は、特定された利用目的の達成に必要な範囲内であることを十分に確認すべきだとしている。また、本人の同意なく個人データを含むプロンプトを入力し、当該データが応答結果の出力以外の目的(機械学習等)で取り扱われる場合は、個人情報保護法の規定に違反する可能性があるため、生成AIサービス提供事業者が当該データを機械学習に利用しないこと等を十分に確認すべきだと注意喚起している[出典: 個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等」2023年6月2日]。これは法的拘束力のある条文そのものではなく、あくまで「注意喚起」である点には留意が必要である。

さらに、厚生労働省の指針は、職業紹介事業者・求人者・募集受託者等に対し、求職者等の個人情報の収集・保管・使用にあたって、その目的を求職者等が一般的かつ合理的に想定できる程度に具体的に明らかにすることを定めている[出典: 厚生労働省「求職者等の個人情報の取扱いに関して適切に対処するための指針」]。これは生成AIの利用を直接規定したものではなく、候補者情報の取扱い全般に既存から課されている義務である。つまり、生成AI特有の新しいルールが存在するわけではなく、従来から求められている「利用目的の範囲内で使う」「目的を明らかにする」という原則が、生成AIの入力場面にもそのまま適用される、という整理になる。

このあたりの基本的な考え方は、生成AIと個人情報、採用担当者が注意すべき点でも扱っている。

誤送信・漏洩を防ぐ、または起きた後に見直す対処の選択肢

誤送信・漏洩への対処には、入力前のマスキング、学習利用されないプランへの切り替え、社内ルールの明文化という3つの方向があり、どれか1つではなく組み合わせて講じる企業が多い。

前出のO社(国内の採用担当者の事例、匿名化)は、応募者の履歴書をそのまま生成AIに入力していたが、事後に次の4つの対策を導入した[出典: jtrustc.co.jp「生成AIの業務利用と個人情報保護」]。

対策 内容
利用ルールの明文化 生成AI利用ルールを社内で文書化
プランの切り替え 学習利用されない法人向けプランへ移行
同意取得文の追加 候補者からの同意取得の文言を追加
入力前のマスキング 氏名・住所等を伏せてから入力

人事担当者向けの実務ガイドも、同様に3つのステップを推奨している。(1)社内で氏名・住所等を削除または「応募者X」等に置換して匿名化する、(2)学習データとして利用されないエンタープライズ版のみを使用する、(3)出力結果に個人情報漏洩がないか最終確認する、という流れである[出典: プロナビAI「生成AIに個人情報を入力してはいけない?」2025年10月]。

ステップ 対応内容
入力前 氏名・住所等を匿名化・置換する
利用プラン 学習データに使われないエンタープライズ版を使う
出力後 漏洩がないか最終確認する

個人の運用ルールだけでなく、組織として生成AI利用のガイドラインを策定する動きもある。サイバーエージェントは2023年4月に社内向け生成AI利用ガイドラインを策定し、同月に専門組織を新設した。DeNAは全従業員向けに生成AI利用のマニュアルを整備している[出典: AI総研「生成AIガイドライン一覧と作り方」]。これらは候補者情報の取扱いに特化したものではなく、全社的な生成AI利用ルールの一例である。

いずれの対策も、「入力する前に何をするか」「出力した後に何を確認するか」という、人の手作業の前後を固める対策である点は共通している。

手作業の工程そのものを減らすという選択肢もある

入力・転記・共有という手作業自体を減らせば、そこで起きる誤送信・漏洩のリスクも合わせて減らせる、という考え方がある。ここまでの対策がいずれも「手作業を前提に、その前後を固める」ものだったのに対し、こちらは手作業の発生自体を減らすアプローチになる。

フェアパスは、候補者への連絡や日程調整、選考ステータスの更新、リマインドといった実行工程を担うオペレーションAIエージェントと、実行結果のデータから採用の改善案を生成する採用改善AIエージェントの、役割の異なる2つのAIエージェントで構成されている[出典: フェアパスnote「月1000応募の対応で改善が止まる構造を解く」2026年9月]。

日程調整は、面接官の予定を見て候補日を作り、案内し、返信を待ち、確定し、更新するところまでを担い、媒体ごとに分かれていた連絡もまとめて対応する。候補者へのメールは内容を確認してから送信する運用になっており、書類・面接の評価と合否は企業側が判断する[出典: フェアパス公式サイト 機能説明、2026年10月時点]。

候補者情報は暗号化して管理し、AIの学習への無断利用は行わない[出典: フェアパス公式サイト 機能説明、2026年10月時点]。これは、人がコピーして別のツールに貼り付ける回数を減らすことで、情報が複数の場所に散らばる機会自体を減らす、という発想に基づいている。ATSに情報を記録する役割は残しつつ、日々の操作や実務をAIエージェントが担うという役割分担の考え方は、ATSは記録し、AIエージェントが仕事を進める。「AI ATS」の次に起きることでも詳しく扱っている。

よくある質問

候補者の履歴書をそのまま生成AIに貼り付けて要約させるのは問題になるか

個人情報保護委員会は、個人情報を含むプロンプトの入力は利用目的の範囲内であることの確認が必要であり、本人の同意なく入力したデータが応答結果の出力以外の目的(学習等)で使われる場合は法違反となる可能性があると注意喚起している。実務では、入力前に氏名・住所等を「応募者X」のように置換して匿名化すること、学習利用されないプランを使うことが推奨されている。

学習利用されない「エンタープライズ版」を使えば安全か

エンタープライズ版の利用は推奨される対策の1つだが、それだけで完結するものではない。入力前のマスキングや出力結果の最終確認と合わせて行うことが、人事担当者向けの実務ガイドでも推奨されている。

まとめ

生成AIで候補者情報が漏れる・誤送信されるのは、AIの出力そのものではなく、入力・転記・共有という手作業の工程で起きることが多い。採用担当者の業務は判断より実行が多く、生成AIを個別に導入しても転記・共有といった実行工程は人に残り続ける。法律は生成AI固有のルールを定めているわけではなく、候補者情報の取扱い全般に利用目的の範囲内での利用を求めているにとどまる。対処には、入力前のマスキング・学習利用されないプランの選択・社内ルールの整備といった運用面の対策があり、これらは組み合わせて講じられることが多い。これに加えて、手作業の工程自体を減らすことで、そこで起きるリスクも合わせて減らすという構造面の選択肢もある。

候補者対応の実行工程をAIエージェントに任せる仕組みに関心がある方は、フェアパスの仕組みをご覧ください。自社の候補者対応で手作業として残っている転記・共有工程がどこにあるかを洗い出し、どこまで減らせるかを確認することから始められる。

著者:フェアパス編集部

この記事は、AIを使って作成し、編集部が内容を確認しています。